生命保険は被保険者の死亡・生存を対象とした保険です。生命保険には死亡保険・生存保険の2種類があり、生命保険はこの2つの保険のいずれかもしくは組み合わせたものとなります。
死亡保険は、被保険者が保険期間中に死んだ場合に死亡保険金が発生するものです。被保険者が急死した場合に家族や会社が受ける金銭的損害をヘッジするために加入します。
生存保険は、被保険者が保険の満期日に生存していた場合に満期保険金が発生するものです。被保険者が意図せず長生きした場合に本人が生活資金に困窮するというリスクをヘッジするために加入します。性質としては損害保険というよりは年金に近いといえます。
なお、いずれの保険契約も保険期間が設定されていますが、保険期間を定めない終身保険というものもあります。
また、生命保険は死亡保険と生存保険の組み合わせにより定期保険・養老保険・定期付養老保険の3つに区分され、それぞれ会計処理方法が異なります。
目次
詳細
定期保険・養老保険・定期付養老保険の違い
定期保険
定期保険(ていきほけん)は保険期間が設定された死亡保険です。保険期間を定めない終身保険と比較して定期保険と呼ばれます。
定期保険は死亡保険ですので、期間中に被保険者が死亡せず満期日(保険期間が終了となる日)となった場合、 満期保険金は支払われません。支払う保険は掛捨てとなり、貯蓄性はありません。
したがって、定期保険は死亡時の損害をヘッジする商品と言えます。
養老保険
養老保険(ようろうほけん)は死亡保険と生存保険をセットにした生命保険であり、保険期間中に被保険者が死亡すれば死亡保険金が支払われ、満期日に被保険者が生きていた場合は満期保険金が支払われます。もちろん保険料は定期保険よりも高額です。
被保険者が期間中に死亡しても生存していても必ず死亡保険金と満期保険金のいずれかが支払われるため、貯蓄性が高い保険商品となります。
したがって、養老保険は主に貯蓄を目的とした商品と言えます。
定期付養老保険
定期付養老保険(ていきつきようろうほけん)は養老保険と定期保険をセットにした生命保険であり、定期保険の損害ヘッジ効果と養老保険の貯蓄性の双方を兼ね揃えています。保険料は養老保険よりもさらに高額となります。
生命保険料の仕訳方法
役員・従業員を被保険者として法人が契約者となって生命保険に加入し、期首に1年分の保険料を支払った場合について考えます。なお、受取人によって仕訳方法が異なりますので注意して下さい。
定期保険の仕訳例
定期保険は掛け捨てであり貯蓄性は無いため、保険期間に応じて損金の額に算入します。保険金の受取人が法人の場合、支払保険料(販管費)勘定で計上します。
▼当期分の定期保険(受取人を法人とするもの)の保険料10,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
支払保険料 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
保険金の受取人が被保険者の遺族※の場合も 基本的には支払保険料で処理します。
※死亡保険金が支払われるのは被保険者が死亡した場合ですので、被保険者自身が受け取ることはできません。
ただし、役員や特定の使用人のみを被保険者としている場合は被保険者への給与とみなされますので、役員報酬(販管費)勘定や給料手当(販管費)勘定で計上します。
▼役員のみを被保険者とする定期保険において、当期分の定期保険(受取人を役員である被保険者の遺族とするもの)の保険料12,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
役員報酬 | 12,000円 | 普通預金 | 12,000円 |
養老保険の仕訳例
養老保険は貯蓄性が高いため、保険契約が終了となるまで資産として計上します。保険金の受取人が法人の場合、保険積立金(投資その他の資産)勘定で計上します。
▼養老保険(受取人を法人とするもの)の保険料50,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
保険金の受取人が被保険者(満期保険金)や遺族(死亡保険金)の場合、被保険者への給与とみなされますので、役員報酬(販管費)勘定や給料手当(販管費)勘定で計上します。
▼養老保険(受取人を役員である被保険者又は遺族とするもの)の保険料40,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
役員報酬 | 40,000円 | 普通預金 | 40,000円 |
死亡保険金の受取人が遺族で満期保険金の受取人が法人の場合、保険料の半額を保険積立金(投資その他の資産)勘定で計上し、残りの半額を支払保険料(販管費)勘定で処理します。満期保険金に関しては貯蓄性がありますが、被保険者がなくなった場合は法人は保険金を受け取れないからです。
▼養老保険(死亡保険金の受取人を被保険者の遺族とし、満期保険金の受取人を法人とするもの)の保険料60,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 支払保険料 |
30,000円 30,000円 |
普通預金 普通預金 |
30,000円 30,000円 |
役員や特定の使用人のみを被保険者としている場合、被保険者への給与とされますので残りの半額を支払保険料ではなく役員報酬や給料手当で計上します。
▼役員のみを被保険者とする養老保険(死亡保険金の受取人を役員である被保険者の遺族とし、満期保険金の受取人を法人とするもの)の保険料40,000円を振り込んだ。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 役員報酬 |
20,000円 20,000円 |
普通預金 普通預金 |
20,000円 20,000円 |
定期付養老保険の仕訳例
定期付養老保険の場合、養老保険部分に定期保険の性質もあることから、養老保険と定期保険の区分が明確になされているかで会計処理が異なります。
区分がされていない場合
養老保険と定期保険の区分がなされていない場合は全額を養老保険として扱いますので、保険積立金で計上します。
▼定期付養老保険(受取人を法人とするもの)の保険料80,000円を振り込んだ。なお、定期保険部分と養老保険部分の区分はなされていない。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 | 80,000円 | 普通預金 | 80,000円 |
区分がされている場合
養老保険と定期保険の区分がなされている場合は、定期保険部分の保険料は定期保険として処理し、養老保険部分の保険料は養老保険として処理します。
▼役員のみを被保険者とする定期付養老保険(死亡保険金の受取人を役員である被保険者の遺族とし、満期保険金の受取人を法人とするもの)の保険料90,000円を振り込んだ。なお、保険料のうち3万円は定期保険部分である。
保険積立金の額 = ( 90,000 - 30,000 ) ÷ 2 = 30,000円
役員報酬の額 = { ( 90,000 - 30,000 ) ÷ 2 } + 30,000 = 60,000円
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 役員報酬 |
30,000円 60,000円 |
普通預金 普通預金 |
30,000円 60,000円 |
傷害特約の仕訳
定期保険・養老保険・定期付養老保険に傷害特約を付帯させている場合、傷害特約部分の保険料は損金算入となります。
▼傷害特約付帯の養老保険(受取人を法人とするもの)の保険料60,000円を振り込んだ。なお、保険料のうち1万円は傷害特約部分の保険料である。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 支払保険料 |
50,000円 10,000円 |
普通預金 普通預金 |
50,000円 10,000円 |
ただし、役員や特定の使用人のみを被保険者としている場合は被保険者への給与とみなされますので、役員報酬や給料手当で計上します。
▼役員のみを被保険者とする傷害特約付帯の養老保険(死亡保険金の受取人を役員である被保険者の遺族とし、満期保険金の受取人を法人とするもの)の保険料50,000円を振り込んだ。なお、保険料のうち1万円は傷害特約部分の保険料である。
保険積立金の額 = ( 50,000 - 10,000 ) ÷ 2 = 20,000円
役員報酬の額 = { ( 50,000 - 10,000 ) ÷ 2 } + 10,000 = 30,000円
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
保険積立金 役員報酬 |
20,000円 30,000円 |
普通預金 普通預金 |
20,000円 30,000円 |
税務上の取り扱い
保険料が給与(現物給与)として扱われる場合
保険料が現物給与とされる場合、税務上は定期同額給与として扱われるため役員であっても過大報酬とならない金額であれば損金計上できます。
従業員に対する現物給与とされた保険料の額は所得税法上も給与とされますので、源泉所得税が課税されます。なお、現物給与とされた保険料は生命保険料控除の対象となります。