認定利息とは、法人が他者に金銭を貸し付ける際にある一定以上の利息を取れば利息相当額を給与として課税しないという基準となる利息です。
つまり、法人が認定利息未満の利息で貸付を行った場合に認定利息で貸し付けたとみなす制度です。営利法人が本来取れる金利を取らずに貸し付けることは営利行為をしているとは言えないからです。
目次
詳細
認定利息って何%なの?
認定利息は法人の貸付資金の原資(出処)と特例基準割合に応じて次のように決まります。
法人が金融機関等から借りた資金を貸し付けた場合
法人が借りたお金を又貸しする形で役員・従業員に貸し付けた場合、法人が支払う利息(貸付資金の調達金利)が認定利息となります。
所得税法基本通達36-49(利息相当額の評価)
使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額については、当該金銭が使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項《利子税の割合の特例》に規定する特例基準割合による利率により評価する。(平19課法9-9、課個2-20、課審4-32、平25課法9-7、課個2-16、課審5-32改正)
わざわざ借りた金額より安く貸し出すくらいなら返済した方が得なため、営利法人の行為としては認められません。したがって少なくとも借りた金額以上の金利で貸し付ける必要があります。
もちろん、借りた金額以上で貸すことは営利行為ですので問題は生じません。ただし極端に高い金利の場合は違法となったり元本の返済を受けられなくなったりする可能性があります。
⇒ 法人・個人事業主はいくらまで利息・遅延損害金を取れるのか
法人の資産を貸し付けた場合
法人の資産を直接貸し付けた場合、貸付資金の調達金利がないため、特例基準割合による利率が認定利息となります(所得税基本通達36-49)。
特例基準割合の利率
特例基準割合は租税特別措置法第93条にその規定があります。
租税特別措置法第93条(利子税の割合の特例)
(中略)
2 前項に規定する特例基準割合とは、各年の前々年の十月から前年の九月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行つた貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を十二で除して計算した割合(当該割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として各年の前年の十二月十五日までに財務大臣が告示する割合に、年一パーセントの割合を加算した割合をいう。
わかりにくい条文ですが、要するに次の計算で求めると規定されています。
特例基準割合(%) = 財務大臣が告示する割合 + 1
この特例基準割合は国税庁Webサイトの「延滞税の割合」にて確認ができます。年をまたいで貸付を行っている場合、期間ごとに区分してそれぞれの認定利息を計算します。
各期間と特例基準割合の一覧表
期間 | 特例基準割合 |
---|---|
平成11年12月31日以前 | 7.3% |
平成12年1月1日~12月31日 | 4.5% |
平成13年1月1日~12月31日 | 4.5% |
平成14年1月1日~12月31日 | 4.1% |
平成15年1月1日~12月31日 | 4.1% |
平成16年1月1日~12月31日 | 4.1% |
平成17年1月1日~12月31日 | 4.1% |
平成18年1月1日~12月31日 | 4.1% |
平成19年1月1日~12月31日 | 4.4% |
平成20年1月1日〜12月31日 | 4.7% |
平成21年1月1日~12月31日 | 4.5% |
平成22年1月1日~12月31日 | 4.3% |
平成23年1月1日~12月31日 | 4.3% |
平成24年1月1日~12月31日 | 4.3% |
平成25年1月1日~12月31日 | 4.3% |
平成26年1月1日~12月31日 | 1.9% |
平成27年1月1日~12月31日 | 1.8% |
平成28年1月1日〜12月31日 | 1.8% |
認定利息を下回る貸付は課税負担が重くなります
例えば、A社が会社の社長B(代表取締役)に1000万円を貸し付けたとします。この場合、特例基準割合の年率を4.3%で計算したとして年間43万円の利息を取る必要があります。
この利息を社長Bから受け取っていない場合、年間43万円をA社が利息として受け取り、それを再び社長Bに役員報酬として支払ったとみなします(認定利息)。
A社は年間43万円の受取利息に対する法人税、そして年間43万円の社長Bへの役員報酬に対する源泉所得税を納付していないことになります。もちろん、役員報酬は定期同額給与など、一定の要件を満たさないと法人税の計算上損金不算入となってしまいますので、社長Bへの役員報酬を損金に計上することで受取利息という利益に課税される法人税を減らすことができません。
さらに、認定利息分の源泉所得税を社長Bから受け取っていない場合、その源泉所得税の額も役員報酬として扱われますので、それに対する源泉所得税がかかってきます。
このような往復ビンタのような課税を受けないためにも、きちんと認定利息を取るように注意して下さい。