法人・個人事業主はいくらまで利息・遅延損害金を取れるのか

法人が受け取る利息・遅延損害金の年率には各種法令の制限があるため、実務上はある一定の年率の範囲内で利率を定める必要が出てきます。

制限を受ける法令は主に次の通りです。

  • 利息制限法
  • 出資法
  • 消費者契約法
  • 民法
  • 法人税基本通達
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目次

利率の下限・上限は?

年率の下限

株式会社などの営利法人は利益を追求しない行為を目的として活動してはいけないため、無利息・基準を下回る低利息での貸付を行った場合、法令に定める年率で貸付を行ったとみなす認定利息という仕組みがあります。

認定利息未満での貸付は税法上デメリットが大きいため、認定利息以上で貸付を行う必要があります。

法人が無利息・低利で貸付を行った場合の認定利息とは

年率の上限

利息制限法

利息制限法では、次の表に定める利息・遅延損害金を超える部分が無効となります。

元本の額 制限利息(年率) 遅延損害金(年率)
10万円未満 20% 29.20%
10万円以上100万円未満 18% 26.28%
100万円以上 15% 21.90%

利息制限法第1条(利息の制限)
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約はその利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一  元本の額が十万円未満の場合 年二割
二  元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三  元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

利息制限法第4条(賠償額の予定の制限)
金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

出資法

出資法(通称)では、下記の表に定める利息を超える契約をしたり、利息を受け取ったり、利息を要求したりした場合、5年以下の懲役刑・1000万円以下の罰金刑に処せられます。

金銭の貸付けを行う者 制限利息(年率)
一般人・非貸金業者 109.5%
貸金業者(プロ) 20%

さらに、プロの貸金業者が年率109.5%の利息の契約をした場合は懲役が5→10年、罰金が1000万→3000万円と刑が重くなります。

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(通称、出資法)第5条(高金利の処罰)
金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2  前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
3  前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

利息制限法と旧出資法の利率の差額「グレーゾーン金利」に関する歴史

昔は利息制限法の超過利息の無効規定は債務者がその利息を支払った場合は適用されず(悪名高き「みなし弁済規定」といわれます)、さらに出資法の上限利率が29.2%だったため、貸金業者の多くは29.2%を上限と考えて貸付を行っていました。この利息制限法の15~20%と出資法の29.2%の利率の間はグレーゾーン金利といわれていました。

その後、平成18年に最高裁が「債務者が強制的に支払わされた金利はみなし弁済規定の適用を受けない」との判決を出し(シティズ判決)、多くの消費者金融がグレーゾーン金利の返還を余儀なくされ、弁護士・税理士がその過払い金返還請求で爆発的に潤った過払い金請求バブルが起き、消費者金融大手が破綻する事態が起きました。

消費者契約法

消費者契約法では遅延損害金は14.6%える部分に関しては無効となります。

消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

これは遅延損害金についての制限ですので、通常の利息に関しては適用されません。

これらの法令を踏まえた利息の上限は?

利息については利息制限法の15~20%、遅延損害金については消費者契約法の14.6%が事実上の上限となると考えてよいかと思います。

大手消費者金融やカードローン会社は利息の年率を7~17%程度に設定しており、また一般消費者の絡む契約書では遅延損害金を14.6%と定めているケースが多いです。

利息に関しては合意により認定利息~利息制限法の上限で自由に合意して決めてよいと思いますが、遅延損害金は契約の不履行に関する規定ですので利率を下げると不履行に対するハードルを下げてしまいますので、よほどのことがない限り14.6%に設定することをおすすめします

なお、法人や個人事業主との取引においては消費者契約法は適用されませんので、その際は利息制限法が遅延損害金の上限になることと思います。

消費者契約法第2条(定義)
この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう
2  この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう
3  この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。

高利貸しと不法原因給付

出資法の制限利率20%を超える利息を取ることは刑事罰が課せられる犯罪となります。

そして、民法上は違法行為のために代金を支払ったり物を引き渡した場合、返還を請求することができない不法原因給付(ふほうげんいんきゅうふ)という規定があります。

民法第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

出資法違反となる利率で金銭を貸し付けを行った場合にも、不法原因給付の規定が適用されて元本の返済事態を受けられなくなる可能性があります。

実際、出資法違反となる高利で貸付を行っていた金融業者に対して不法原因給付の規定を適用し、債務者が元本の返済義務を負わないとする判例も出ています。

最高裁判例平成20年6月10日民集第62巻6号1488頁
1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。

出典:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36427

したがって、利息制限法・出資法・消費者契約法の各規定に反しないように利息・遅延損害金を設定する必要があります。

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