貯蔵品(棚卸資産) – 勘定科目・仕訳例

貯蔵品(ちょぞうひん)は、切手・収入印紙・事務用品・燃料等の未使用分を決算時に資産計上する際に使用します。

大量の切手類等を購入して経費計上すると実態より利益を少なくすることができ利益操作に繋がる可能性があるため、経費計上した消耗品等に多額の未使用分がある場合は貯蔵品の計上が必要となります。

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重要性の原則

重要性の原則は、会計原則の一つであり、重要性の低い細かな会計処理をすると帳簿の明瞭性に欠けるため、金額が少額で利益操作になりづらいといった重要性の乏しい処理については簡便な会計処理を行っても良いという原則です。

貯蔵品の計上についても同様で、仮にあらゆる未使用品を貯蔵品に計上するとなると、決算期においてボールペン1本の未使用も見逃さず評価額を計算し資産に振替処理をする必要が出てきますが、帳簿に評価額数円〜数十円の資産が並ぶととても見づらいですし、そのような処理をしたところで期間損益に大した影響を与えません。

なぜなら、仮に毎期末において100円のボールペン100本程度の未使用分が存在するとして、それを貯蔵品に振り替えない場合は当期においては1万円多めに損金が計上されることになりますが、翌期にも同様の処理を行えば仮に前期において貯蔵品としなかった場合と比較して利益の額に違いは生じません。それに、最終的に貯蔵品がなくなったり会社を精算した場合には貯蔵品勘定を使用していない場合は最後の期において損金を計上できず、貯蔵品勘定をしていた場合はそれらを処分する等して損金計上することになり、長い期間においては損益は同じことになります。

前期は利益が出たから貯蔵品を計上したけど、今期は赤字なので貯蔵品を計上しない、といった処理を繰り返すと期間損益に影響を及ぼすため問題となりますが、一度決めた会計処理を継続して行う分については重要性の原則により貯蔵品に計上しないという処理も認められるということになります。

ただし、普段は印紙の在庫がせいぜい数万円しかないという会社が利益を少なくするために収入印紙を100万円分購入しておくといったような行為は明らかに重要性の乏しい処理とはいえないため、これらに関しては貯蔵品に計上する必要が出てきます。

もちろん、規模によって貯蔵品の目安も異なります。大企業がボールペンを本支店合わせて常時1000本ストックするのと、普段より利益が多く出た零細企業が急遽期末にボールペンを1000本購入するのとでは金額的なインパクトもストックの動機も異なるからです。

貯蔵品の評価方法

貯蔵品は棚卸資産ですので、指定がなければ棚卸資産の評価方法のうち最終仕入原価法を使います。つまり、最後に貯蔵品を購入した時の単価で評価します。

貯蔵品として扱う範囲

少額である場合や毎年概ね一定量を購入・消費するような場合、特に問題はありませんので資産計上する必要はありません。

例えば、事務所であれば通常は未使用のボールペンの数本はあるでしょうし、切手類であれば80円切手の数枚は保管しているでしょう。その程度であれば問題ありません。

しかし、例えば所得金額を少なくするために期末に100万円分の収入印紙を購入するなど多額の未使用分の費用処理が行われれば利益操作に使われる可能性があるため、通常業務では発生しないような多額の未使用分が発生した際は貯蔵品として振り替え処理を行います。

この点に関しては、社有車のガソリン代(旅費交通費)で考えるとわかりやすいでしょう。未使用のガソリンを全て残すところ無く貯蔵品にする必要があるとすれば、ガソリンタンクだけでなく燃料ホースに至るまで全ての車両の未使用ガソリンを計量しないといけなくなりますが、それは非現実的です。
一方、会社に燃料貯蔵タンクを設置してガソリンを保管している場合等は、さすがにタンク内のガソリンはある程度計量可能ですし金額も少額とは言えないため、タンク内の燃料分を貯蔵品として計上すべきでしょう。

税務調査の対象に

貯蔵品に計上すべきものを費用のままにすることで所得金額を少なくした場合、税務調査で発覚すれば更正処分を受けることになりますので注意して下さい。

ボールペンの未使用分を指摘されることはないでしょうが、例えば単価が高く、換金性が高く、劣化しにくいものを期末に大量購入すると、「利益操作しているのではないか?」と疑われる可能性もあります。

したがって、「迷ったら貯蔵品にする」と良いでしょう。

購入時に貯蔵品等を計上する会計処理

印紙等を購入した時に貯蔵品・消耗品・備品などの勘定科目を使って資産計上する会計処理もあります。

この場合、期末に貯蔵品等の棚卸しを行い、未使用分を計算してその分を費用処理し、残りを貯蔵品等のまま資産として残しておきます。

この処理方法だと期末に必ず備品類の棚卸しを行う必要があり、手間がかかります。

仕訳例

▼当期は収入印紙(租税公課)を必要以上に買いすぎたため、期末時点で120万円分の収入印紙が未使用であった。例年における期末の印紙のストック量はおおむね10万円分程度である。なお、収入印紙の購入時には租税公課(費用)勘定で計上していた。

借方科目 貸方科目
貯蔵品 1,200,000円 租税公課 1,200,000円

▼上記の事案において、翌期首に再び費用に振り替えた。

借方科目 貸方科目
租税公課 1,200,000円 貯蔵品 1,200,000円
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