売上高(営業収益) – 勘定科目・仕訳例

売上高(うりあげだか)は、商品・製品やサービスを販売して得た代金を計上します。ただし、全ての売上を売上高で計上するわけではなく、売上の種類により営業収益となる他の勘定科目を用いることもあります。

また、固定資産を帳簿価格より高く売却して利益が出た場合は差額を固定資産売却益(特別利益)で計上し、法人預金口座に入金された利息は受取利息(営業外収益)で計上します。

スポンサーリンク

目次

詳細

商品の返品・返金を行った場合

販売した商品に不良等があったことを理由に顧客に対して返品・返金を行った場合、売上高を逆仕訳して直接控除するか売上戻り高を計上します。

値引きした場合

販売した商品に問題があった場合で返金ではなく値引きを行った場合、売上高を逆仕訳して直接控除するか売上値引高を計上します。

大口注文に対してリベートを提供した場合

販売促進のために大口注文に対してリベートを提供した場合、売上高を逆仕訳して直接控除するか売上割戻し高を計上します。

代金支払期日前の支払いに対して割引を行った場合

代金を早期に支払った取引先に対してインセンティブとして割引を行うことがあります。

この割引は販売促進などの営業上の理由ではなく、会社の資金繰りを改善させるという営業外の目的のために行われるため、売上高を逆仕訳する方法ではなく売上割引(営業外費用)勘定を使って処理します。

売上高の総額表示・純額表示

総額表示

売上高の総額表示とは、受け取った代金の全額を売上高として計上し、返金・値引き・リベートは売上戻り高・売上値引高・売上割戻し高で控除する形で計上する表示方法です。

また、委託販売業務委託の場合において、お客さんから受け取った売上金10,000円を自社の売上高として計上し、販売手数料を差し引き委託先に9,000円支払った場合にこの代金を売上原価として計上するのが総額表示です。

仕訳例を示します。A社から販売委託を受けたB社が顧客Cに商品を10,000円で販売した場合、全額を売り上げに計上します。

借方科目 貸方科目
現金 10,000円 売上高 10,000円

販売手数料10%の1,000円を差し引いた金額を委託先A社に支払います。とりあえず仕入高を使いますが売上原価であれば何でも構いません。

借方科目 貸方科目
仕入高 9,000円 現金 9,000円

この売上高総額表示のメリットは、売上高を10,000円とすることができるため、会社の規模を大きく見せることができます。デメリットとしては、10,000円の売上に対して営業利益が1,000円(利益率10%)となるため、売上高営業利益率が低く計算される点が挙げられます。

純額表示

売上高の純額表示は、返金・値引き・リベートを売上高から直接控除(逆仕訳)して計上し、売上戻り高・売上値引高・売上割戻し高といった勘定科目を用いない表示方法です。

また、委託販売や業務委託の場合において、お客さんから受け取った代金を預り金として計上し、販売手数料を差し引いて売上に計上した上で委託先に残額を支払うのが純額表示です。

仕訳例を示します。保険会社と代理店契約(業務委託契約)を締結した不動産会社が顧客に保険の勧誘をし、保険料10万円を受け取ったとします。

借方科目 貸方科目
現金 100,000円 預り金 100,000円

次に、代理店手数料である2万円を差し引き(売上に計上)、残額の8万円を保険会社に支払うとします。

借方科目 貸方科目
預り金
預り金
20,000円
80,000円
売上高
現金
20,000円
80,000円

このような処理方法のメリットとしては、売上高が仲介としての実態に近い2万円とすることができ、利益率を向上させることができます。基本的に委託販売や業務委託は在庫リスクを負わないため、仕入れて販売した場合と同様の会計処理をするのは実態にそぐわないといえます。

また、これらの純額表示による売上高を消費税法上の課税売上高の計算に使用することが認められる場合、課税売上高を少なくすることができるため課税事業者の判定(課税売上高1000万円以下)や簡易課税制度の適用を受けられるかどうかの判定(課税売上高5000万円以下)において有利になります。

デメリットとしては、売上高が総額表示より少なく計上されるため、取引規模が一見小さく見えてしまう点にあります。とはいえ世界的には純額表示が一般的です。

IFRS(国際会計基準)では代理販売・委託販売を純額表示とする

売上高の純額表示について、IFRSイファース/国際会計基準)では一定の基準を満たす場合には純額表示とするよう求められています。

(前略)IFRS では、一定の販売取引において企業が販売取引の当事者(本人当事者といいます)として行動しているのではなく、代理人として行動している場合があることを規定しています。このような場合は、当該企業は手数料のみを収益認識する(すなわち収益を純額表示する)ことが求められます。一方、企業が本人当事者として行動している場合には、当該企業は総額表示で収益認識を行うことになります。
企業が本人当事者として行動しているか、あるいは代理人として行動しているかの判断を行うにあたっては、IAS 第18 号「収益」の付録の設例21 において下記の詳細な判断規準を記載しています

i) 本人当事者
以下の4つの項目のいずれか(又はこれらの組み合わせ)が、企業が本人当事者として取引を行っている場合の特徴です。
(a) 物品又は役務を顧客に提供する、或いは注文を履行する主たる責任を負っている
(b) 在庫リスクを負っている
(c) 直接的又は間接的に価格を設定する裁量がある
(d) 顧客からの債権に関する与信リスクを負っている

ii) 代理人
企業が代理人として行動している場合の特徴の一例として、取引における企業の収益が、取引毎の固定料金、あるいは顧客に対する請求額の一定割合として事前に定められていることが挙げられます。

引用元:IFRSの基本 連載第3回:IFRS導入の影響-収益(その1)|経営管理・ビジネス分野IFRS最新情報|IFRSコンソーシアム

例えば、百貨店やネットショップのモールでの取引の場合、百貨店・モール側が商品の取引ごとに一定額または一定割合の手数料を徴収する形のものが挙げられます。

また、顧客と密接な関係を築いており、各種業務を取り次ぐことが多い不動産業・コンサルティング業・税理士業などの職種の場合、顧客に保険会社・工務店・ウェブ製作会社・システム開発会社・業務代行業者を紹介し、これらの業者に見積もりを提出させ、業者が顧客にきちんと業務を行うよう指示することが多いかと思います。

こういった業務によって仲介者として多少の収益を得る場合、顧客や業者から直接紹介料や手数料をもらう場合もあれば、一度顧客から代金を預かった上で手数料を引いた金額を業者に支払う場合もあるでしょうが、いずれの場合も仲介者としての立場であれば純額表示をすることが望ましいと言えるでしょう。

ただし、仲介者としてではなく自社で責任をもって仕事を受注し、単に下請けに流したというような場合、委託販売とはいえませんので総額表示が必要となります。これは在庫リスクを負って商品を仕入れ、利ざやをのせて販売する卸売・小売業者が売上高と仕入高を計上するのと同様です。

仕訳例

▼20万円で仕入れた商品を25万円で販売し、代金を現金で受け取った。

借方科目 貸方科目
現金 250,000円 売上高 250,000円

▼上記の事案において、商品に不良があり返品されたため、25万円を現金で返金した(純額表示で仕訳)。

借方科目 貸方科目
売上高 250,000円 現金 250,000円

▼5万円で販売した商品に傷が付いていた旨のクレームが入ったため、1万円の値引きで合意し、顧客に値引き額1万円を現金で手渡した(純額表示で仕訳)。

借方科目 貸方科目
売上高 10,000円 現金 10,000円

▼5,000円で販売している商品をA社が100個まとめて購入したため、大口注文に対するリベートとして1個につき500円を現金で割り戻した(純額表示で仕訳)。

借方科目 貸方科目
売上高 50,000円 現金 50,000円

▼B社に商品100万円分を販売して代金は掛けとし、販売日から10日以内に支払えば代金を5%割引する旨を合意した。その後B社は販売日から9日目に割引金額を差し引いた95万円を当社のA銀行普通預金口座に振り込んだ。

借方科目 貸方科目
普通預金(A銀行)
売上割引
950,000円
50,000円
売掛金
売掛金
950,000円
50,000円
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です