法定福利費(販管費) – 勘定科目・仕訳例

法定福利費(ほうていふくりひ)は、法律により定めのある社会保険料のうち会社側が負担する必要のある保険料を支払った場合に計上します。

法律により法人や一定規模の個人事業主に加入を義務付けられている社会保険料のみが対象となりますので、民間の保険会社に支払う保険料は支払保険料(販管費)勘定で計上します。

また、社会保険料には該当しない社員旅行費用や事務所のお茶代等は福利厚生費で計上します。

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目次

詳細

法定福利費に該当するもの

以下の保険料等が法定福利費に該当します。

  • 厚生年金保険料の従業員負担分
  • 健康保険料(介護保険料を含む)の従業員負担分
  • 児童手当拠出金
  • 雇用保険料の従業員負担分
  • 労災保険料

なお、日本年金機構に納付する厚生年金・健康保険料に関しては労働者と使用者で折半(労使折半)となりますので、使用者側負担額のみ法定福利費に計上します。児童手当拠出金は厚生年金等と一緒に納付しますが全額が使用者(会社)負担となりますので全額が法定福利費です。

労働基準監督署・労働局に納付する雇用保険料・労災保険料のうち、雇用保険料については一部は労働者負担となりますので、その労働者負担額を差し引いた金額を法定福利費に計上し、全額会社負担となる労災保険料は全額が法定福利費となります。

なお、納付した全額を法定福利費として計上し、決算時に計算を行う方法もあります。

労働者負担部分の仕訳

社会保険のうち厚生年金保険と健康保険、また労働保険のうち雇用保険は労働者負担部分があります。この労働者負担部分は役員報酬・給与から天引きで徴収します。

厚生年金・健康保険料については会社側は当月分が翌月末(休日の場合は翌営業日)に口座から引き落とされますが、従業員側からは当月分を翌月の給料支払日に控除することになるかと思いますので、

従業員から預かり → 日本年金機構に納付

となります。したがって、従業員の給料から控除した時点で預り金を計上し、納付した時点で預り金を取り崩すか、期末にまとめて処理します。

雇用保険料については毎年6月1日~7月10日の間に年度更新概算保険料の申告・納付を行います。概算保険料は翌年3月31日までの見込み給料を計算して雇用保険料の労働者負担額を概算で計算して納付し、年度更新は昨年の概算保険料と確定保険料の差額を計算して納付します。

概算保険料を計算して納付した段階で来年の3月分までの保険料を納付できますが、まだ給料は支払われていませんので、従業員負担分を立て替え払いしたことになります。毎月従業員の給料から雇用保険料(社会保険料)を控除しますが、

労基署・労働局に概算保険料納付 → 従業員から保険料徴収

となりますので、概算保険料を納付した段階で立替金に計上し、従業員から保険料を徴収した段階で立替金を取り崩すか、一旦預り金に計上した上で期末にまとめて計上します。

期末にまとめて計上する方法(仕訳テクニック)

日本年金機構

日本年金機構に社会保険料を納付した時点において、労働者負担分と使用者負担分を計算して分けて仕分けするのは大変ですので、簡便な方法として社会保険料を支払った際に全額を法定福利費として計上する方法があります。

▼社会保険料10万円が口座から引き落とされた。

借方科目 貸方科目
法定福利費 10万円 普通預金 10万円

この場合、従業員の給料から控除した社会保険料は預り金で計上したままとします。

▼従業員の給料20万円から社会保険料控除3万円と所得税1万円を差し引いて16万円を支払った。

借方科目 貸方科目
給料手当
普通預金
普通預金
20万円
3万円
1万円
普通預金
預り金(社保控除)
預り金(所得税)
20万円
3万円
1万円

決算時点において、法定福利費50万円、社会保険料控除による預り金が15万円だったとします。仮に3月決算法人とすると、法定福利費は2月分まで引き落としされており、2月労働分の給料は3月10日に支給されたとしてこの時に控除する社会保険料は2月分となります。そしてこの法人が社会保険料を支払った日に損金の額に計上する会計処理を継続していた場合、決算時の預り金15万円は全額納付されていますので、取り崩して社会保険料を逆仕訳します。

▼法定福利費50万円、社保控除による預り金が15万円であり、15万円の預り金はすでに納付済みである。

借方科目 貸方科目
預り金(社保控除) 15万円 法定福利費 15万円

これで法定福利費の期末残高が35万円、預り金はなくなります。

※本来であれば厚生年金・健康保険料の労働者負担分と会社負担分はほぼ同額(児童手当拠出金の額だけ会社側が少し多い)となります。

社会保険料は労働者負担分も含めて請求が来るため、社会保険料の全額を法定福利費として計上した場合は期末に該当期間に対応する預り金を法定福利費の逆仕訳で処理します。

民間保険料の仕訳

損害保険や生命保険などは支払保険料(販管費)勘定や保険積立金(投資その他の資産)勘定で計上します。

仕訳例

社会保険料を全額法定福利費で計上し、期末に労働者負担分の預り金をまとめて法定福利費の逆仕訳で処理する方法の場合

▼10月分の社会保険料10万500円(健康保険料3万円、厚生年金保険料7万円、児童手当拠出金500円)がA銀行普通預金口座から引き落とされたため、全額を法定福利費で計上した。

借方科目 貸方科目
法定福利費 100,500円 普通預金(A銀行) 100,500円

▼上記の事案において、期末に当期に支払った12ヶ月分(前年3月〜今年2月)の社会保険料120万6,000円に対応する社会保険料労働者負担分の預り金60万円(前年3月〜今年2月天引き分)を法定福利費の逆仕訳で処理した。なお、当社は3月決算法人である。

借方科目 貸方科目
預り金(社保控除) 600,000円 法定福利費 600,000円

社会保険料のうち会社負担分は法定福利費で計上し、労働者負担分は預り金を取り崩して処理する方法の場合

▼10月分の社会保険料10万500円(健康保険料3万円、厚生年金保険料7万円、児童手当拠出金500円)がA銀行普通預金口座から引き落とされたため、会社負担分5万500円のみ法定福利費で計上し、労働者負担分5万円は預り金を取り崩した。

借方科目 貸方科目
法定福利費
預り金(社保控除)
50,500円
50,000円
普通預金(A銀行) 100,500円
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